2008年

2月29日(金)

ときどきはとり残されて春の雲

ほんとうのところ、
ぼく自身も「客観的に〜」という言葉はよく使いまする。
理由は簡単、とても便利だから。
そうそう気を遣っているわけでもないの。
でも、「ああ、おれ、いま、いやな感じなんだろうなぁ〜」と、
こころの何処かで後悔しながら口にしているときもあって。
それを何かの拍子に思い出しちゃっては・・・・さらに「ああ」となることがあるのね。
そんな感じ、です。

ときどきは とりのこされて はるのくも
季語=春の雲

いつもありがとうございます。明日からもよろしく〜。

※春の雲は、夏や秋のようにはっきりとした輪郭をなさないものが多いようです。
刷毛でさっとなでたような、淡くふわりとしたイメージでしょうか。


2月28日(木)

紅梅や差別は人の中にあり

会議などでよく聞く「客観的に〜」という意見は、
現実的には「ちっとも客観的じゃないじゃん」という感じです。
(めったに)口には出さないよ。
ひとの価値判断など、おそろしく単純なものだ。
でも、「自分は他人からはどう見えているのだろう?」という視点は、
ものすごく大切なものなのだと思います。

こうばいや さべつはひとの なかにあり
季語=紅梅

※紅梅という特別な樹種があるわけではないそうです。
一般的には梅といえば白梅。清楚な白梅よりも、紅梅には暖かみや親しみを感じるといいます。
でも、それを卑俗と感じる人もまた少なくはないようです。


2月27日(水)

梅林や不都合という都合あり

後発にとって不利なのは「類想類型」が、すでに多々あるということらしい。
なかには「俳句は、ほぼ100%が類想類型だ」という俳人もいるみたい。
世界で一番短い17文字、しかも伝統俳句と言われるものには季語が必要だ。
その通りなのかもしれない。
でも、すでにご高齢である某先生は力強く言う。
「誰も見たことのない俳句は、まだまだ、つくれるはずよ。」と。
この先生でよかった、と思う。

ばいりんや ふつごうという つごうあり
季語=梅林

いつもありがとうございます。

※週末に湯島天神の梅祭りに行って来ました。早咲きの梅は既に満開でしたが、その他はまだまだ蕾。
人はすごく多かったけど・・・・。例年通りなら来週あたりから見ごろになるそうですよ。


2月26日(火)

白梅や嫉妬の色もまた真白

そんな感じ、という感じです。
嫉妬心がなければ、人類が発展することなどなかったとも聞くし。
だからそれは在っていいもの。
最悪なのは、向上心のない嫉妬心、なのかもしれない。

はくばいや しっとのいろも またましろ
季語=白梅


2月25日(月)

春が来て東京をまた広くする

まったく同じ言葉なのに、
それを発する人や受け取る人によって、
真逆くらいの印象を持つことがあるから不思議です。
場所やタイミングによっても異なるのかな?
ほんとに不思議。
それをコントロールしようなんって、ムリ、ムリ。
と、そっと思っていたりもします。

はるがきて とうきょうをまた ひろくする
季語=春


2月24日(日)

月光と梅の匂いは違わねど

きのうは・・・・、
「佐保姫」のふりがなを「さおひめ」と表記しましたが・・・・。
大辞林では「さほひめ」でした。えへ。
ただ本来は、旧かな表記が「さほひめ」で、
新かな表記としては「さおひめ」となるそうです。
でも耳にするのも「さほひめ」だし、その方がだんぜん響きもいいし。
きょうからぼくも「さほひめ」にしよーと。

げっこうと うめのにおいは たがわねど
季語=梅

えっ、春一番って「春一番にやってくる嵐」のことだったの〜!
多いときは春四番まであるの〜? 知らなかったです。
いつもありがとうございます。

※きょうもまた微妙な「ふりがな」。たのしいです。「違う」は、「たがう」とも「ちがう」とも読みます。
辞書によっては意味が違うような同じような???でも、ちがうような・・・・。分かんないものはノリで!
※ ちなみに、歴史的かな遣い(旧かな)の「は・ひ・ふ・へ・ほ」は、「ワ・イ・ウ・エ・オ」と発音します。


2月23日(土)

佐保姫や月は満ちてるけんけんぱ

書くことがないなぁ〜とぐだぐら悩むときほど、
無駄も大切なんだ、と、つよく思います。
ものすごく大事なことなのかもしれません。
でも、調子が良くなると、そんなことはすぐに忘れてしまいます。
その繰り返しです。

さほひめや つきはみちてる けんけんぱ
季語=佐保姫

※サホヒメ(もしくはサオヒメ)は「春の造化の神なり」。
カタチあるものではなく、あたりが目に見えて春めく感じを、大昔の人がそう名付けたのだそうです。


2月22日(金)

スノードロップ色の付かないしたたかさ

きょうは早起きできなかった。あはは・・・・。とにかく、アップ!えい!

すのーどろっぷ いろのつかない したたかさ
季語=スノードロップ

※英名の通り「雪のしずく」を想わせる、清楚可憐な花のかたち。
和名は、ゆきのはな、または松雪草といいます。


2月21日(木)

折り鶴のくちばし強く二月かな

考えさせられる対象が身近にいなければ、人は考えることなどない、
と、考えさせられてしまうことがあります。ときどき。

おりづるの くちばしつよく にがつかな
季語=二月

※なにげなく「対象」という言葉を辞書で引いてみたら「@精神活動が向けられるもの」(岩波国語辞典より)
とありました。へぇ〜、ちょっとかしこくなったかも。


2月20日(水)

春菊や聞こえぬほどの口答え

愚痴の多い人といっしょに働くのは大変だ。
その愚痴が止まらない日などは、さらに大変だ。
でも一番大変なのは、
「こいつ、時と場所が変われば俺に対する愚痴を延々と言うのかもなぁ」
という思いで、そつなく受け答えしていることかもしれない。
そんなことってない?

しゅんぎくや きこえぬほどの くちごたえ
季語=春菊

※香りが強いので、苦手な人は苦手かも。純和風っぽいと思っていたけど、南ヨーロッパ原産なんだってさぁ〜。


2月19日(火)

長命を恥じらうようにひな菊は

なまじ通じ合うと思うから誤解が生じのだそうです。
いつもそれで失敗しています、ぼくも。
身に沁みてはいますが、それでもむずかしいものだなぁ〜、と、いまも思う。
無知を笑うだけなら誰でもできること。

ちょうめいを はじらうように ひなぎくは
季語=雛菊

※二月ごろから数ヶ月に渡って咲き続けることから、「長命菊」、「延命菊」、「ときしらず」という別名があります。明治初年に渡来。今は「デージー」の名の方が通りやすいかも。ちなみに英名のデージーは「day’s eye」が由来なのだとか。そのカタチが太陽を連想させるのかな?


2月18日(月)

春の川きらめくものは小声なり

類は友を呼ぶ。それが真実なのか、そうではないのかは、よくわからない。
似たところを探そうと思えばいくらでもありそうだし、
異なるところを探そうと思えば同じくらいにありそうだ。
ただ、「今いる場所を否定しながらでは、すべてにプラスにならない」
ということだけは、個人的な実感として強く持っています。

はるのかわ きらめくものは こごえなり
季語=春の川


2月17日(日)

邂逅を継ぎ足して行く猫柳

また一人言・・・・、おいおい
ということで、質問です。
何が「ということで」なのかは分かりませんが、ということで。
どちらだと思います?
1、「おいおい」と泣いている。
2、「おいおい」と自分にツッコミを入れている。
3、「おいおい」と誰かを諭している。

かいこうを つぎたしていく ねこやなぎ
季語=猫柳

答えは、この中にあります。

※ネコヤナギは日本中の川辺に自生しています。柳の一種で、庭木や生け花にも。
葉の出る前の二月に、猫のような銀ねずみ色のやわらかい毛の花穂をつけます。きれいなもんですよ。
※「邂逅」とは、思いがけなく出合うこと、巡り会うこと。


2月16日(土)

中心の憂鬱がはじけ蕗の薹

天気がいいと気持ちのいいものじゃね。
世の中がどうじゃとか、なんじゃもんじゃとか、
ひとりの力ではどうにもならないことをアレコレ悩むよりも、
心地よく合わせられる方法を見つけることのほうが大切かもね。自力でね。
いつもありがとうございます。いつもながらの一人言だけど。

ちゅうしんの ゆううつがはじけ ふきのとう
季語=蕗の薹


2月15日(金)

鼻の穴広がってますホウレンソウ

ちょっと辛辣だったかも?と、少し後悔していると「笑っちゃいました」と言われたり、
笑ってねと投げかければ「身につまされます」と言われたり。いろいろ。
手に取るように理解すること、判で押したように理解させること。
そんな無理難題をうっかり「可能なこと」のひとつとして数えていたとしたら・・・・。
すれ違いが多くなるのも、当たり前のこと、なのかもしれませんね。

はなのあな ひろがってます ほうれんそう
季語=菠薐草

※子どもの頃、ホウレン草の葉っぱはタンポポに似ているなぁと・・・・。
ギザギザのあるのは東洋種、大きく丸みのあるのは西洋種、そして改良品種も流通しているのだそうです。


2月14日(木)

愛情のかけらはかけら余寒かな

きょうという日だけは思うのです。恒例のように。
ああ〜生きにくい世の中だ、と。
おあとがよろしいようで。それでは、また明日。幸運を。

あいじょうの かけらはかけら よかんかな
季語=余寒

きのうは、びっくりするほど寒かったね〜。
いつもありがとうございます。

※寒明け後も残る寒さのことです。意味的には「残暑」の対義語みたいなものなのかしら。


2月13日(水)

梅の香の身にそいやすし憐れかな

「生きにくい」という言葉があります。
あるのは当たり前なのですが、本心なのかそうじゃないのか、
ときどきそのような言葉を口にする人がいます。
テレビでもラジオでもどこにでも
「生きにくい世の中になった」などの活用で意外に溢れています。
ひねくれものは考えます。本当にそうなの?
個々にどんな背景があるのかなど知りもしないのだけれど・・・・。

うめのかの みにそいやすし あわれかな
季語=梅

※気品ある清楚な花として、桜に並ぶ日本の代表的な花木です。
早春、百花にさきがけて咲くといわれています。


2月12日(火)

ひとつくらいふて腐されいる目刺しかな

結局のところ、整合性とか複線とかが大好きなんです。
あまりにも複雑すぎるものは苦手だけど・・・・。
だからといって、細かいところが気になるわけでもありません。
ちょっと話が違うけど、
原作本と映像作品との違いなんて、ほとんど気にならない。
それはそれで結構便利です。大抵のものは楽しめるからね。

ひとつくらい ふてくされいる めざしかな
季語=目刺し



2月11日(月)

薄氷や風評を聞くこころもち

クイズです。しかもマニアックなクイズです。
たまたまメモっていたものを見つけちゃいました。
「いいまじないに力を与えるには
悪い言葉も知らなければいけないって、でもけっして使うなって」
宮崎駿監督の作品中に出てくるセリフです。
さって、その作品とは?

うすらいや ふうひょうをきく こころもち
季語=薄氷

答えは、こちらをクリックしてくださいね。

※早春に、わずかにうすく張られた氷のこと。


2月10日(日)

早春や手鏡にまで映り込む

宮崎駿監督の描くキャラクターが好きです。
若いのになんとなく初老のようなんだって。
言われてみればそうかもね。そうか?
ハウルの動く城」なんって、まさにそれを逆手にとったような・・・・。
いやわかんないけど。
以前に見たインタビュー映像の中で、
「子どもはわかってくれるんだよ。」という言葉が、とても印象的だったのよね。
ふと思い出しました。

そうしゅんや てかがみにまで うつりこむ
季語=手鏡


※立春後からまもなくの時候です。早い春と書く通り、ほとんどが冬の気配のままで、寒さもまだ厳しい。
春めく感じを、視覚的にではなく感覚でとらえた言葉なのだそうです。


2月9日(土)

公魚やすべて盤石とは行かぬ

たとえばですよ、
「○○とはこういうものなのだよ、ちみぃ」と、
天より高い目線で意見する人がいるとします。
異口同音、
「俺様の明晰な頭脳は古今東西の○○をすべて網羅している。
少なくとも人並み以上に知っているのさ。
俺様の記憶が正しいならば、こんなものを○○とは認めたくないね」と、続きます。
ときに、自分もそんな「勘違いさん」と大して変わらないのかも?
と思うと、ぞっとします。

わかさぎや すべてばんじゃく とはゆかぬ
季語=公魚

※湖の氷上に穴をあけて釣るワカサギ釣りが有名です。テレビでよく見ます。
本来は海の魚で、網漁が行われるのが春なのだそうです。
鮭と同じように淡水生まれ海育ち、そして淡水に戻って産卵するのだとか。


2月8日(金)

かたちよき口びるのごと冴え返る

ひとは、ほんとうは、「矛盾」が好きな生き物なのだと思う。
好きでなければ、ひと様の「矛盾」に気づくわけもないのだ。
苦手なものほど、どうしても目に入る、ということもあるのかもしれない。
けれど、「矛盾」は外敵ではないのだし。
そもそも「矛盾」という言葉をつくったのも、他ならぬ人間なんだもの。
そうなんだもの。誰もが内包しているものなんだもの。
だからこそ、生きて行けるものなんだもの。

かたちよき くちびるのごと さえかえる
季語=冴え返る

※そろそろ暖かくなるのなぁと思っていると、おどろくような寒さが戻ってくることをいいます。
※上記の「ごと」は助動詞「如し」の語幹。何々のように、何々のようだ、という意味。


2月7日(木)

旧正月人生ゲームに上がり在り

立場が上とか下とか関係なく、それぞれの面目を立てるってむずかしい。
かなりの実力と本物の自信がないとできないことなのかもね。
「本物の自信」って、なんだろね?
なせばなる、おさるはお尻が真っ赤か。
語呂がいいから、また言ってみたかっただけ。

きゅうしょうがつ じんせいげーむに あがりあり
季語=旧正月

きょうは、旧暦の元旦にあたる日。


2月6日(水)

春寒しフランス人形すきとおる

斜め読みしたくなる文書は遠慮なく斜めに読めばいいじゃん。
数行で読む気が失せる文章なら読まなきゃいいじゃん。
じっくり読みたいものは味わって読めばいいじゃん?
という話を目にしたとき、普通がないんだけどね、
ものすごく気持ちが軽くなったことを覚えています。ほんとに。
ただ逆に考えれば、
1行でも「読み手の趣味に合わない文章」が混ざっていれば、
それが普通なんだけど、
一気に読む気を減退させることもあるのかもしれないのです。

はるさむし ふらんすにんぎょう すきとおる
季語=春寒し

青い目をしたお人形は〜♪・・・・なんだっけ?

※立春以降の寒さのこと。「余寒」とか「残る寒さ」とも言いますが、
「春寒」は春に重点を置いているので微妙に違います。日本語はいろいろと微妙で、おもしろいです。


2月5日(火)

煮凝りや体温をまた奪われし

ぼくは賞味期限というものを、ほとんど気にしません。
もともと両親が驚くほど無頓着だから、かもしれません。
もう一つ理由があるとすれば、
真夏に、完全にヨーグルト状態になっていた牛乳を飲んでも何ともなかったから、かな?
あまりの暑さに、うっかり、がぁ!っとね。
気づいたときには、勢いが良すぎて飲み込んじゃってたのさ。
十数年前の話で、確かに今より体力はあったのだけれど・・・・。

にこごりや たいおんをまた うばわれし
季語=煮凝り

※煮凝りは冬の季語。煮魚などの煮汁がさめてゼラチン状になったもののことです。
いま風に言えば、コラーゲンのかたまり。下町の江戸っ子は好んで食べたとか。サメやヒラメ、フナなどの煮凝り料理が有名らしい。


2月4日(月)

後出しの後悔ばかり春の風邪

どっかズレてる、とは、思っていたのですが・・・。
きのう、自動車の運転免許を失効していることに気づきました。
それも失効後、約1年5ヶ月。
必要ならば、潔く自動車講習所に通うところからはじめなければいけないそうです。
もう笑うしかありません。

あとだしの こうかいばかり はるのかぜ
季語=春の風邪

きょうは、立春です。暦だけは、春なのにぃ〜です。

※陰暦の昔は、立春イコール新年だったそうです。
暦によって春に向けて早々と感情をリセットしていたのかもしれませんね。
どうにもならないことは、すぱっと忘れちゃいましょ、ってことかな。


2月3日(日)

大空に頷いてみる冬の犬

目が覚めたら、東京も雪でした。
気づいたらすでに一面真っ白、真っ先に近くの公園に行きました。
が、すでに誰かの足跡が‥‥、競っても意味のないことなんだけどさ。
犬も空を見上げるのかしら?
子どもの頃からずっと犬を飼っていたけど、
そういえば見たことないかも?、そんな素朴な疑問でございます。

おおぞらに うなずいてみる ふゆのいぬ
季語=冬

きょうは、節分ですね。


※「犬馬(けんば)難し、鬼魅(きみ)易し」という言葉が、中国の古典「韓非子(かんぴし)」にあるとか。
絵画の話。実在する犬や馬を描くことは難しく、想像上の鬼を描くことは容易い、という意味。なるほど。


2月2日(土)

狼や消せない縁噛みしめる

モラルハラスメントとか、パワーハラスメントとか、
いろいろ注目されるけど、
壊されて壊したら誰も同情してくれないだろうに・・・・。
くらいなぁ、きょうも。いつものことだけどさ。

おおかみや けせないえにし かみしめる
季語=狼

※餌の少ない冬季が一番おそろしいので、冬の季語なのでしょうか。
オオカミの語源は大神なのだとか。太古では神は大自然と同じく、おそろしい存在でもありました。
ニホンオオカミとは、実際はただのヤマイヌのことだったとも言われています。西洋のウルフとは別種。


2月1日(金)

あやとりや紆余曲折もたのしかり

最近はっきりと見えてきたことは、
「やり方」や「やりやすさ」は人それぞれだぁー、ということ。
今も昔も、俳句に限らず、さまざまな「手引き書」があふれています。
さまざまな諸先輩方から、さまざまな指導があります。当たり前だけど。
正解は、自分の身体で体験して、自分の頭で取捨選択して、
自分の時間を大量に使って自分で見つけるもの、なのかもしれない。
もちろんマナーくらいは守ります。さらに当たり前のことでした。

あやとりや うよきょくせつも たのしかり
季語=綾取り

2月です。いつもありがとうございます。

※なんでアヤトリが冬の季語なのかは知りませんが、いまやアヤトリって世界的なのね。

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