• 俳句ストック(シヲクム)

今日の俳句、こうのこうき

2014年9月

30日(火)

秋高しさしたる用もなくそぞろ

小さな白い蝶が、せわしげに飛んでた。

あきたかし さしたるようも なくそぞろ
季語=秋高し
※秋は大気が澄んでいるので、からりと晴れれば空が抜けるように高く感じられます。
※天高しと同じ。
※桜が紅葉しはじめました。きょうもありがとうございます。

29日(月)

ややあって口をすぼめる夜長かな

室外機の稼働音が聞こえないだけで
夜が急に深まった感じです。

ややあって くちをすぼめる よながかな
季語=夜長
※秋の彼岸を過ぎると、夜間はとくに過ごしやすく、仕事や勉強がはかどるよな。
※気のせいかもしれない。きょうもありがとうございます。

28日(日)

争いはとくに好まぬ落花生

ピーナッツが土の中に生るなんてびっくり。

あらそいは とくにこのまぬ らっかせい
季語=落花生
※南米原産で、江戸時代に渡来したらしい。秋が旬。
※ふつうのマメ科の植物はつるにさやをつけますが、これは土の中にさやをつけます。
※晩夏に咲く花のあと、花の部分を地中に伸ばし、さやの付いた実を結びます。
※だから「落花生」というそうな。きょうもありがとうございます。

27日(土)

次の日は臆病になる花すすき

風に一斉になびく姿を、
大なり小なり、人は気に入っている。

つぎのひは おくびょうになる はなすすき
季語=花芒
※ハナススキは、ススキの別称です。
※至る所に生い茂っているけれど、秋の七草のひとつ。
※よくある風景。きょうもありがとうございます。

26日(金)

草陰を清める如く鉦叩

じっと聞いていると
わけもなくさみしくなったりなんかして‥‥。

くさかげを きよめるごとく かねたたき
季語=鉦叩
※コオロギ科の昆虫で、昼夜問わず、チンチンと静かに繰り返します。
※植え込みなどにもいるので、わりと簡単に聞くことができます。
※打楽器の鉦(かね)を叩くようだといいますが、実際は余韻のない単調な鳴き声です。
※彼岸明け。きょうもありがとうございます。

25日(木)

雑草に埋め尽くされて草ひばり

夕暮れ時の草ひばりは、みょうにもの悲しい。

ざっそうに うめつくされて くさひばり
季語=草雲雀
※コオロギ科の秋に鳴く虫。フィリリリリという儚げな鳴き声が印象的です。
※涼しい時間帯を好むらしく、秋らしくなると夕方でもよく鳴いています。
※背の高い草むらや低木の下などから声が聞こえます。
※声があまりにキレイだったので「ひばり」という名を拝命したとか。
※空き地は一面秋の草。きょうもありがとうございます。

24日(水)

お手上げの気配がしたら秋の雨

夏でもなく冬でもない雨は、
どこか寂し気なのだという。

おてあげの けはいがしたら あきのあめ
季語=秋の雨
※秋晴れの言葉もありますが、秋は台風の季節でもあり雨の日が多い。
※爽やかでもあり。きょうもありがとうございます。

23日(火)

秋分の真昼の自由夜の自由

実感できるのは、だいぶ経ってからでしょうね。

しゅうぶんの まひるのじゆう よのじゆう
季語=秋分
※二十四節気のひとつで、春分と同じく昼と夜の長さが等しくなる日です。
※秋分の日は、亡くなった人々を偲び、かつ祖先を敬うための国民の休日。
※おはぎを食べる日だったのに。きょうもありがとうございます。

22日(月)

適当な理由を付けて秋の空

秋の空は「移ろい」の象徴
だったりもしますからね。

てきとうな りゆうをつけて あきのそら
季語=秋の空
※秋の日の澄み切った大空のこと。
※突然の雨に‥‥。きょうもありがとうございます。

21日(日)

引力に引き寄せられて秋彼岸

「暑さ寒さも彼岸まで」といいますが、
今日の日中は暑かった。

いんりょくに ひきよせられて あきひがん
季語=秋彼岸
※秋分の日を含む秋のお彼岸。20日頃から7日間あります。
※あの世を彼岸(ひがん)、この世は此岸(しがん)と呼びます。
※一般的には春も秋もただの「彼岸」ですが、季語としては秋のみ秋彼岸とします。
※それでも夜は涼しい。きょうもありがとうございます。

20日(土)

秋そうび心ならずも言い過ぎし

微妙な違いに気づくかどうかは、
それをどれだけ気にかけているか、
なのだと思う。

あきそうび こころならずも いいすぎし
季語=秋そうび
※秋に咲くバラを「秋そうび」といいます。
※バラは四季それぞれで楽しめます。
※ブレーキが‥‥。きょうもありがとうございます。

19日(金)

ご時世に合わせるように秋刀魚焼く

サンマは「旬」というものを
より身近に感じさせてくれます。

ごじせいに あわせるように さんまやく
季語=秋刀魚
※秋が旬のサンマは脂が多く美味。昔から東京人の好物とされています。
※落語の「目黒のさんま」が有名ですが、江戸時代はサンマは季語ではなかったそうですよ。
※毎年秋になると大量に回遊して来る魚のひとつなのですが、昨年は不漁でかなり話題になりましたな‥‥。
※松茸は遠いし、栗は面倒だし。きょうもありがとうございます。

18日(木)

真っ直ぐなところもありし秋の蜂

秋は冬眠に向けて
一所懸命飛び回っているんですよね。

まっすぐな ところもありし あきのはち
季語=秋の蜂
※とはいえ、ほとんどの蜂は冬を越すことはできません。
※ミツバチは成虫のまま越冬するそうです。
※なんといいますか。きょうもありがとうございます。

17日(水)

行き先を告げるが如く曼珠沙華

歩道に点々と咲くそれは、
偶然ではなく、誰かがていねいに植えた痕跡だったみたい。

ゆきさきを つげるがごとく まんじゅしゃげ
季語=曼珠沙華
※歩道の植え込みや庭先に飛び火したかのように点々と咲き始めています。
※曼珠沙華は、花は咲いても実はできず、種子を飛ばすことはありません。
※球根を株分けするようです。群生する花なので繁殖力は強いのでしょうね。
※秋の彼岸の頃に咲くので、一般的にはヒガンバナといいます。
※多年草です。きょうもありがとうございます。

16日(火)

とうがらし意に添わぬからないがしろ

そういう一面は、誰もが持っているのじゃないかしら。

とうがらし いにそわぬから ないがしろ
季語=唐辛子
※トウガラシは、ナス科の一年草。原産は中南米。
※安土桃山時代あたりに観賞用として大陸から渡って来たらしいのですが‥‥
※その昔は食用でなく毒薬だったとか?
※鉢植えのトウガラシがかわいいよ。きょうもありがとうございます。

15日(月)

善き人のふりして別れ秋の蝶

9月も半ばを過ぎれば、
秋もそろそろ本番なのだなと感じます。

よきひとの ふりしてわかれ あきのちょう
季語=秋の蝶
※朝晩が冷え込みはじめ、秋が深まるにつれ、活動する蝶の個体数はどんどん少なくなります。
※敬老日でしたね。きょうもありがとうございます。

14日(日)

白粉の咲いてこだわることもなく

華やかで可愛らしいけれど、
特別目を引くというわけでもない、
といった感じかも。

おしろいの さいてこだわる こともなく
季語=白粉花
※オシロイバナはメキシコ原産。江戸の初めに日本にやって来たと言われています。
※夕方に咲いて朝にはしぼんで落ちてしまうので、夕化粧とも呼ばれています。
※草丈は低く、方々に枝を広げ、とにかくたくさんの花を付けます。
※花壇や街路樹の脇、公園の植え込みなどでよく見かけますね。
※花色は赤、白、黄色など。きょうもありがとうございます。

13日(土)

かまきりのはっきりしてる薄緑

そそくさと隠れる気はないらしい。

かまきりの はっきりしてる うすみどり
季語=蟷螂
※鎌のような鋭い前足を持っているので、カマキリなのでしょうかね。
※「蟷螂」と書いて「かまきり」と読みますが、俳句では一般的に「とうろう」と読ませます。
※あえてカマキリと読ませたい場合は、「鎌切」と書くことも。
※緑色と褐色の2種類がおり、どうやら飛ぶのが下手。
※久しぶりに間近で見た。きょうもありがとうございます。

12日(金)

夕焼けの右にはみ出す実紫

西日の定位置が、ずいぶん移動したみたい。

ゆうやけの みぎにはみだす みむらさき
季語=実紫
※クマツヅラ科の紫式部の実のことです。
※ムラサキ色の小さい実を、びっしりと細い枝に付けます。
※その重みで枝垂れる様が美しく、観賞用の庭木として人気あります。
※きょうもありがとうございます。

11日(木)

邯鄲や虚飾の影の強きこと

「見栄っ張り」の子は、やはり「見栄っ張り」でした。

かんたんや きょしょくのかげの つよきこと
季語=邯鄲
※ルルルルという鳴くコオロギの仲間。
※秋の虫のなかでも、もっとも美しい鳴き声かもしれませんね。
※カンタンという小難しい名は、中国の故事「邯鄲の夢」から来ているそうですよ。
※夏の疲れが出たようです。きょうもありがとうございます。

10日(水)

言いなりとなるのを嫌い秋桜

風に揺れるピンクの花に、
桜のイメージを重ねたのでしょうかね。

いいなりと なるのをきらい あきざくら
季語=秋桜
※アキザクラとは、コスモスの異名です。
※もともとはメキシコ原産ですが、群生していてもどこか寂寥感のある花です。
※しかし実際は、折れてもすぐに立ち直るほどのたくましい花です。
※見た目も大事なのよ。きょうもありがとうございます。

9日(火)

一房の切りとるまでの黒葡萄

ブランデーもワインと同じブドウが原料だったなんて、
ぜんぜん知りませんでしたよ。

ひとふさの きりとるまでの くろぶどう
季語=黒葡萄
※ブドウは人類が栽培をはじめた最も古い果実のひとつ。
※葡萄酒の原料として、今なお世界で最も生産されているそうです。
※日本の産地では山梨が有名ですが、ブドウは全国で生産されています。
※お酒に興味はないけれど。きょうもありがとうございます。

8日(月)

簡単に言い負かされて無月かな

口げんかで誰にも負けたことがないなんて、
いくらなんでも大げさ過ぎませんか。

かんたんに いいまかされて むげつかな
季語=無月
※今日は陰暦八月十五日の仲秋の名月にあたります。
※無月とは、雲でせっかくの名月が見えないこと。
※すっかり雲に隠れているのに、空はほのかに明るいぞ。
※無月というより雨月かも。きょうもありがとうございます。

7日(日)

藪蛇となるを恐れる野菊かな

名前を知らないキクの花を、
まとめてノギクと呼んでいたりしますが‥‥

やぶへびと なるをおそれる のぎくかな
季語=野菊
※野生するキクを総称してノギクと呼びます。
※本州から九州にかけてよく見られる薄紫色のキクはノコンギク、もしくはヨメナという種類。
※ノギクという種類はありません。
※8日は十五夜ですよ。きょうもありがとうございます。

6日(土)

夕暮れの匂いとともに月を背に

日本海に沈む夕日を見たいと思ったのですが、
今日という日はどうにも雲が邪魔でした。

ゆうぐれの においとともに つきをせに
季語=月
※秋は月がとくに美しい季節とされ、月だけで季語となります。
※またの機会に。きょうもありがとうございます。

5日(金)

記憶より少しこぼれて萩の庭

イギリス式の庭園にもふつうに馴染んでいます。

きおくより すこしこぼれて はぎのにわ
季語=萩の庭
※秋の七草のひとつ。庭園などによく植えられています。
※草冠に秋と書くように、古くから秋を代表する花です。
※新潟に来ています。きょうもありがとうございます。

4日(木)

そのままで無に帰すならつくつくし

セミとかカナブンとかいろいろ、
夏の虫の終わりが目に付きはじめましたね。

そのままで むにかえすなら つくつくし
季語=つくつくし
※法師蝉のこと。
※真夏にも鳴いていますが、少し涼しくなってから盛んに鳴くので秋の季語です。
※「ツクツクホーシ」という個性的な鳴き声から、つくつく法師、つくつくしとも呼ばれます。
※他に比べれば小ぶりの蝉で、けたたましく鳴くわりに警戒心が強いらしい。
※供養とするには喧しいか。きょうもありがとうございます。

3日(水)

ケータイに見知らぬ知らせ桐一葉

ケータイとは、言ってみれば、
自分の知り合いだけを登録する小さな自己完結の箱なのかも。

けーたいに みしらぬしらせ きりひとは
季語=桐一葉
※この季語は、桐の葉が一枚落ちて秋の訪れを知ったという中国の故事にちなんでいます。
※栄枯盛衰などの観念的な意味合いを重ねて詠まれることも多いようです。
※自転車カゴに落葉が2枚。きょうもありがとうございます。

2日(火)

きっかけはたわいないこと猫じゃらし

よく笑う人は、どんなときも楽しそうじゃん。

きっかけは たわいないこと ねこじゃらし
季語=猫じゃらし
※イネ科の野草。空き地、道端、野原どこにでもある。
※緑色の花穂が子犬のしっぽのようなので、狗尾草(えのころぐさ)という名があります。
※これで猫をじゃらして遊ぶことから「猫じゃらし」ともいいます。
※「たわいない」は「他愛ない」とも書くけれど、これは当て字なのだとか。
※ちなみに「他愛」は、自分より他人の幸せを願うこと。
※ころころと。きょうもありがとうございます。

1日(月)

申し訳程度に祈る九月かな

残暑はまだ終わってなかったらしい。

もうしわけ ていどにいのる くがつかな
季語=九月
※立春から二百十日。9月1日ごろは台風が多いそうです。
※秋のはじまりですね。きょうもありがとうございます。