• 俳句ストック(シヲクム)

今日の俳句、こうのこうき

2013年11月

30日(土)

書き溜めた手紙のように冬紅葉

閉館時間を調べず、夕方、
新宿御苑に紅葉を観に行ったら、入れなかった。
苑内に入れなかったので
その周辺を少しまわってよしとした。
几帳面なようで大雑把な人にはよくある話。

かきためた てがみのように ふゆもみじ
季語=冬紅葉
※ここ数日で木々の色が一気に深まったようです。カエデ、イチョウ、ケヤキなど、
名のある木の紅葉はやはり違います。
※たぶん今が見ごろです。きょうもありがとうございます。

29日(金)

居眠りの半分終わる姫椿

他人(ひと)の頭の中のもやもやを
自由自在に表現できたのなら‥‥
(サザンカの原種は白いひなびた花という。もはや想像できない)

いねむりの はんぶんおわる ひめつばき
季語=姫椿
※ツバキによく似ている。瓜二つ。
※サザンカはツバキのように花ごと落ちはしない。ハラハラと散る。
※花びらもツバキのようにぼってとした厚みはない。薄い花びら。
※こんな日は山茶花日和。きょうもありがとうございます。

28日(木)

一部始終その気はなくも冬の暮

関東地方も、頭から尻尾の先まで、
明日はぐっと気温が下がるのだとか。
まだ冬らしい装いではないけれども、
12月ともなれば、気分も気候も冬本番ですからね。

いちぶしじゅう その気はなくも ふゆのくれ
季語=冬の暮
※冬の日の夕方のこと。きょうもありがとうございます。

27日(水)

足下の明るく軽く草紅葉

ぽっと空いてしまった時間を利用して
かつて徳川将軍家の庭園だった浜離宮恩賜庭園に足を運んだ。
といっても閉館30分前のこと。
まさに釣瓶落とし、刻々と日暮れてゆく。
通いなれた人なのか、庭園の人だったかもしれない、懐中電灯を持っていた。
ああ、と、ちょっとばかり、感心してしまった。

あしもとの あかるくかるく くさもみじ
季語=草黄葉
※なんとはなしに、冬と秋が同時進行しているかのようで。
※日中の暖かいこと。きょうもありがとうございます。

26日(火)

親しみもこもごもありて木の葉舞う

親しき仲にも礼儀あり、
これが何気にむずかしかったりなんかして‥‥。
(昼どきの、昔ながらの喫茶店で、見知らぬ人と相席となって、ふと考えた)

したしみも こもごもありて このはまう
季語=木の葉
※木の葉は、落葉も枯葉も含めての総称です。
※地面にも様々な彩りの木の葉が敷き詰められはじめましたね。
※ときどき。きょうもありがとうございます。

25日(月)

木枯しのどこ吹く風とちりぬるを

もしやこれが木枯し1号かと思ったら、
東京地方ではすでに2週間も前に吹いていたそうですね。
肌寒い風ではありませんでしたが、
かなりの勢いで木の葉を吹き散らしています。

こがらしの どこふくかぜと ちりぬるを
季語=木枯し
※本格的な冬の到来を告げる木枯しは、初冬に吹く北西の季節風です。
※葉を落とし木を枯らすかのごとく強い風なので、木枯しと呼ばれます。
※冬は脂肪を蓄えがちです。きょうもありがとうございます。
※新しい「創刊号の巻頭句」、中村汀女の「風花」をアップしましたよ。よろしければ、どうぞ。

24日(日)

日を置いて口あたりよきラ・フランス

ネットで検索したら、ラ・フランスの食べごろは
ヘタのまわりが耳たぶほどのやわらかさになってからという。
買ってから常温ですでに1週間ほどたちました。

ひをおいて くちあたりよき ら・ふらんす
季語=ラ・フランス
※ひと口に洋梨といっても様々な種類があります。
ラ・フランスはその代表格といったところでしょうか。
※食べごろには果肉がぬるぬるとして皮がむきにくいのが特徴的です。
※美味しくいただきました。きょうもありがとうございます。

23日(土)

気に染まぬことごとふえし枯芭蕉

我慢している人が、良識のある人ではないようです。
(限度をこえると、たいていは手を焼くことになりますからね。)

きにそまぬ ことごとふえし かればしょう
季語=枯芭蕉
※高さ5メートルにもなる大きな草。ゆえに、枯れるとみすぼらし、というのが、この季語の本意なのだろうか。そこに見る「無常」が本意なのだろうか。
※バショウの英語名は「ジャパニーズバナナ」というそうです。
※忙しさにかまけて風邪を引いてしまった。きょうもありがとうございます。

22日(金)

指先のたとえばゆるむ小春かな

紙で指の先端を切った。
ほんの小さな傷なのに微妙にひりひりとする。
人さし指だからキーボードをたたくとわずかにいたい。
人さし指に力が入らないと、
何かのスイッチを押すにもいちいち不便だ。
歯ブラシが洗えないから、左手で洗う。
皿洗いも少々不便かもしれない。

ゆびさきの たとえばゆるむ こはるかな
季語=小春
※陰暦十月(11月中旬から12月上旬くらい)にあって、まるで春のように暖かい陽気の日のことです。
※陽の当たる場所とそうでない所の気温差が激しい。日陰、北側の部屋は、寒い。
※きょうもありがとうございます。

21日(木)

いちにまいやさしくなでる柿落葉

柿紅葉は朱・紅・黄などが入りまじり、
一枚一枚に美しい色合いがあります。
「みんな違ってみんないい」とは言いますが、
それぞれの好みはあらゆるものに勝ります。
趣もつまりは好みです。

いちにまい やさしくなでる かきおちば
季語=柿落葉
※柿は都心部でもわりと身近な木ですが、ご近所との関係もあるのか、落葉はそうそうに片付けられてしまうようです。
※綺麗なのにね。きょうもありがとうございます。

20日(水)

遠くより銀杏黄葉の照り返し

2日前にちょっと立ち寄った新宿中央公園のイチョウは
まったく黄葉していませんでした。
ふと気づくと、
うちの近所の日当りのいい場所にある
一本のイチョウが、いい感じに黄葉してた。
「イチャオ」と10回言ったら「イチョウ」となります、か?

とおくより いちょうもみじの てりかえし
季語=銀杏黄葉
※中国ではその葉がアヒルの足のようなので「鴨脚(イチャオ)」と呼ぶそうです。
※イチョウは仏教伝来とともに中国から渡来したとされています。
※なりませんよ。きょうもありがとうございます。

19日(火)

コスモスのまだ揺れている十一月

ここ数カ月の気温でみると、
今年は「秋」がほぼないそうです。
でも多くにとっては、
カエデもしくはイチョウの葉の色づきこそが、
「秋」なのじゃないだろうかね?
統計の中にすべてがあるはずもないのだけれど。

こすもすの まだゆれている じゅういちがつ
季語=十一月
※1年なんて‥‥。きょうもありがとうございます。

18日(月)

みるみると正しきさまに返り花

季節外れの花として時折り目にするのは、
サクラとツツジが多いようです。
気が向けば、タンポポや藤の花も咲くことがあるそうです。
逆行しているわけではないのです。

みるみると ただしきさまに かえりばな
季語=帰り花
※11月のあたたかい日に、季節外れの花が咲くことを「帰り花」といいます。
※本当は来年の春を先取りしているのですが、「返り花」もしくは「帰り花」、
「忘れ花」などといいます。「狂い花」とも呼ばれています。
※ツツジが一輪ほど。きょうもありがとうございます。

17日(日)

まじまじと満月にみる蔦紅葉

電柱や電線に絡まるツタを見たことがありますが、
ツタにも限界があるのでしょうね。
でなければ、日本中がツタに覆われてしまいますからね。
「伝う」とは、何かを手掛かりに連続して移動すること。

まじまじと まんげつにみる つたもみじ
季語=蔦紅葉
※ツタの這う塀をよく見かけます。ときにはツタに一面覆われている建物もありますね。
※さまざまなものを「伝う」ことから付けられた名前だといわれています。
※ツタには、秋に紅葉するものと、常緑のもの、2種類があります。
※俳句でいうツタは紅葉するブドウ科の夏蔦です。きょうもありがとうございます。

16日(土)

紅葉七分徒歩十三分の復路

ケータイ(スマホだけど)は、
(ぼく的には)忘れてもさほど不安ではありませんが、
充電し忘れているとなると
みょーに不安です。

こうようななぶ とほじゅうさんぷんのふくろ
季語=紅葉
※早いものは大分紅葉してきましたか。昭和記念公園などは今が見ごろのようです。
※なぜでしょうか。未練でしょうか。きょうもありがとうございます。

15日(金)

花八つ手働くひとの爪丸く

仕事を持つ既婚女性の多くは、
毎日2つの職場を掛け持ちしているのだとか。
ひとつは会社、ひとつは家庭。
(苦笑い)(以前テレビでいってた)
働きながらすべての家事をこなすなど、
今も昔も、並の体力と精神力では、まぁムリな話なのだろう。
(いや無理だ)(俺には無理だ)
最近の朝ドラ「どちそうさん」がおもしろい。
あまり見慣れていないから、
オーソドックも王道も、なにやら新鮮だ。

はなやつで はたらくひとの つめまるく
季語=花八手
※江戸時代から庭木として植えられるようになったそうです。
※たくましい植物で、湿った日陰であっても元気に花を咲かせます。
※台風の時にバッサリと枝打ちされた、ご近所の八つ手が生き生きと花を付けました。
※「生き生き」っていいなぁ。きょうもありがとうございます。

14日(木)

ジャンケンに負けて悔しい椿の実

あまりの睡魔にどうにも勝てず。
今日はそうそうに眠ります。

じゃんけんに まけてくやしい つばきのみ
季語=椿の実
※ツバキの実は果皮がかなり厚い、熟すとそれが割れて中の種が出てくる。
※きょうもありがとうございます。

13日(水)

つまずいて石蕗の花うなずいて

やっと一息つけそうだというときに思い付いた句、
でもまだ忙しくて今日もすでに明けがたいに近い‥‥。
時計の音と、寒くて着込んだダウンの擦れる音が
夜に響いています。

つまずいて つわぶきのはな うなずいて
季語=石蕗の花
※菊に似た明るい黄色の花、茶人に好まれるひなびた味のある花。
※その葉に艶(つや)があること、葉が蕗(ふき)に似ていること、岩場に咲くことなどから、石蕗(つわぶき)という名が付いたそうです。
※石蕗は「つわ」と読ませ、大方は「つわのはな」と短く使います。
※長い1日でした。きょうもありがとうございます。

12日(火)

茶の花や転べばどこか打つように

茶の花が、茶の湯の
「わび」「さび」「ひえ」「からび」などを
よく体現しているというのは、
ちょっと出来すぎなくらいです。

ちゃのはなや ころべばどこか うつように
季語=茶の花
※ツバキの仲間で、金色の蘂が特徴の白い五弁の花です。
※秋から初冬にかけて咲きます。急激に冬の寒さになりましたね。
※製茶のために栽培されるほか、生け垣などにもよく植えられています。
※清楚という曲者もあり。きょうもありがとうございます。

11日(月)

檸檬青しひとつの枝にひとつの実

先日、鉢植えのレモンを見たのです。
まだすべての実が青かった。
おそらく摘果されていたのでしょう。
見たまま、ひとつの枝にひとつの実がなっていました。
それが何かひどく、存在感というか、訴えるものがありました。

れもんあおし ひとつのえだに ひとつのみ
季語=檸檬
※檸檬という字は薔薇と同じく、読めるけれど書けない漢字ですね。
※冷蔵庫にあるレモンに季節感を感じることはありませんが、
本来は秋に収穫されるミカン科果実です。インドのヒマラヤ原産なのだとか。
※西洋の木かと思った。きょうもありがとうございます。

10日(日)

黄葉することにせわしく落葉する

人間は基本的に身勝手で、想像力に欠け、
働くことの嫌いな生き物だったのかもしれない、
と、思い知らされることがあります。

こうようすることにせわしく おちばする
季語=黄葉
※「紅葉かつ散る」という季語があります。紅葉しながらも散っていく葉の目立つ様子です。
※単に「もみじ散る」といえば、冬そのものの景色となります。
※つまり、すべては、本末転倒だ。きょうもありがとうございます。

9日(土)

山茱萸の実やなめらかな色をとく

「AかBかの明快さ」と、「AとBのやわらかな混色」と、
どっちが頑迷かは考えるまでもないのだが‥‥、
どちらが「正しいか」と問われれば、なるほど、微妙だね。

さんしゅゆのみや なめらかな いろをとく
季語=山茱萸の実
※春には黄色い花をぎっしりとつけ、秋にその実はなめらかに赤く熟します。
※まるでグミのように柔らかな小さな実は、美しく、「秋珊瑚」と称えられています。
※もともとは薬用植物として中国・朝鮮より古くに渡来しました。
※今は観賞用として庭園などで栽培されるミズキ科の落葉高木です。
※もちろん俳句の話。きょうもありがとうございます。

8日(金)

紅葉して見覚えのなき八重桜

遠目にはわからない紅葉のはじまりも、
真下から見上げてみるとそれなりに感動してみたり、
発見したつもりになってみたり‥‥。

もみじして みおぼえのなき やえざくら
季語=紅葉
※桜は他の木々よりも早く紅葉しはじめますが、花ほどに愛でることはありません。
※むしろ気づきかない(かも)。きょうもありがとうございます。

7日(木)

あら思い出に寄りかかるのね冬立ちぬ

すべては忙しさにかまけて、めんどうになるもの。
「忙中閑あり」とは、よく言ったものですね。
ひっくり返せば、忙しさに逃げるなということでしょう?
自主的って、今さらながらに大変だ。

あらおもいでに よりかかかるのね ふゆたちぬ
季語=冬立つ
※ここから立春までの3カ月が冬となります。
※そういえば、なぜ人は苦い思い出を完全に忘れることができないのだろうね。
※完全に忘れられたらSFか。きょうもありがとうございます。

6日(水)

耳かきに傾ぐわが身に冬隣

ある日、電話の声がくぐもっていてよく聞き取れませんでした。
ときどきあることなので、きっと電波の状態でも悪いのだろうと思っていました。
その夜、久しぶりに耳かきをしたら(いつもはお風呂上がりに綿棒)、
大きな垢がごっそりと出てきました。
言うまでもなく、いろいろとクリアになりました。

みみかきに かしぐわがみに ふゆどなり
季語=冬隣
※明日は立冬です。じんわりと寒さを感じるわけですね。
※季節の変わり目によく使われる「春隣」はうれしさを含んでいます。
一方の「冬隣」は少しばかり複雑な思いを感じさせる季語なのかもしれませんね。
※炬燵の季節ですね。きょうもありがとうございます。

5日(火)

たくましさ夢のかさばる酉の市

あの活気がわりと好きです。

たくましさ ゆめのかさばる とりのいち
季語=酉の市
※毎年11月の「酉の日」に、熊手などの縁起ものを売る賑やかな祭事です。
※酉の市といえば、浅草の鷲(おおとり)神社が古くから有名です。
※なぜ酉の日というかといえば、年まわりだけでなく日にちにも十二支の周期があるから。
(つまり12日ごとに子・丑・寅・卯・辰・巳‥‥と繰り返されているらしい)
※今年は11月3日(日)が「一の酉」だったので、12日後の15日(金)が「二の酉」。27日(水)「三の酉」まであります。
※1年の中で約30回、十二支が繰り返されている計算になります。それに何の意味があるかは知りませんが、現在は「酉の日」といえば11月の「酉の市」です。
※順番では今日はイノシシの日です。きょうもありがとうございます。

4日(月)

連休のところどころに薄紅葉

「もみじは峰より染め、花はふもとより咲く」
ということわざがあるそうです。
「虚子編季寄せ」の初紅葉の項で知りました。
まぁたしかに、そんな感じがします。

れんきゅうの ところどころに うすもみじ
季語=薄紅葉
※この連休、特別どこに行ったというわけでもないのですが、(半分は仕事でしたし)、
ちょっとばかり郊外に足を運んだら、ちらほらと紅葉がはじまったなぁ、という感じでした。
※代々木公園あたりの見ごろはまだひと月も先みたい。きょうもありがとうございます。

3日(日)

うっすらと身にしむ笑みや手のひらに

さて、揚句の季語はなんでしょうか?
答えは下記で。

うっすらと みにしむえみや てのひらに
季語=身に入む
※本来は季節感のない言葉ですが、秋の冷気を感じさせる季語です。
※意味としては秋の冷気にもののあわれを実感したということですが、古くから内面的な発露、心情的な何かを絡ませるかのように使われることが多いようです。
※もともとは和歌で愛用された伝統的な表現が、季語として定着したのだと言います。
※「身に染む」とも書きます。きょうもありがとうございます。

2日(土)

見慣れないことごとくとて冬支度

「冬支度」といっても、
今は足りなければ「買いそろえる」ことで終わり、
大昔は自前でなんとか「工夫する」ことからはじめたのでしょうかね。

みなれない ことごとくとて ふゆじたく
季語=冬支度
※コンビニのごみ箱の下から大きなドブネズミが飛び出してきた。鉢合わせしてギョッとした。
※街にはクリスマスのディスプレがちらほら。きょうもありがとうございます。

1日(金)

寝そべって考えている鰯かな

生まれて初めて古着を買ってみた。
とてもおしゃれな店長らしいき人は、どこか魚を連想させた。

ねそべって かんがえている いわしかな
季語=鰯
※太平洋側では秋に大量にとれて、旬とされています。
※弱いと書いてイワシは、日本近海の回遊魚です。
※今日から11月、暦では冬のはじまりの月。きょうもありがとうございます。