今日の俳句、こうのこうき
2015年9月
30日(水)
いつになく酔うていつかの金木犀
花の時期は短く、風に容易く散ります。 散り敷かれた花がまた美しい。
いつになく ようていつかの きんもくせい季語=金木犀 ※オレンジ色の花を付けるのがキンモクセイで、彼岸の頃に咲きます。 ※その甘い香りが秋の深まりを告げます。風に乗れば遠くまで香る。 ※原産は中国で、日本には江戸時代になって渡来したといわれています。 ※清少納言の頃には無かったのね。きょうもありがとうございます。
29日(火)
紫苑咲く捨てたきことをため息と
今までシオンだと思い込んでいた花が、シオンでなかったことを知り、思わずため息。
しおんさく すてたきことを ためいきと季語=紫苑 ※淡い紫色の花で、草丈は2メートルほど‥‥ ※古名を「しおに」、「鬼の醜草(しこぐさ)」とも。その由来は『今昔物語』にあるそうで、去った人を思うという意味が込められているとか。 ※なんか、すいません。きょうもありがとうございます。
28日(月)
なみなみとしずくと落ちる芋名月
暮らす地域や家庭によって 頭に浮かぶイモは異なるのかしら。
なみなみと しずくとおちる いもめいげつ季語=芋名月 ※団子やススキの穂と一緒に芋をお供えしたことから、仲秋の名月を芋名月とも呼びます。 ※イモといっても里芋のこと。縄文時代から付き合いのある野菜です。 ※サツマイモの栽培がはじまったのは江戸時代。ジャガイモが普及したのは明治以降。山芋は遥か昔から日本の山に自生しています。 ※今日は話題のスーパームーンでした。 ※一日遅れの月見。きょうもありがとうございます。
27日(日)
名月や古き柱に古き染み
十五夜、今日の月、名高き月など様々な呼び方があります。
めいげつや ふるきはしらに ふるきしみ季語=名月 ※陰暦八月十五日の月は中国から暦の伝わる前から大切にされてきました。 ※月の満ち欠けは農作業の重要な目安。とくに陰暦八月十五日は初穂を祝う祭の日であったらしく、団子やススキの穂などを供える習慣はここから生まれたようですよ。 ※新暦の8月15日は終戦日。きょうもありがとうございます。
26日(土)
無理解をなじるでもなく冷やかに
月に兎はいませんよ。
むりかいを なじるでもなく ひややかに季語=冷やか ※秋となり肌寒さを感じること。朝夕に実感することが多い。 ※よく似ていますが「冷たし」は冬の季語。 ※日曜日は仲秋の名月。きょうもありがとうございます。
25日(金)
揺れてみて自由を得たりコスモスは
まるで日本の原風景のような、郷愁を誘う花。
ゆれてみて じゆうをえたり こすもすは季語=コスモス ※メキシコ原産のコスモスは、明治時代に渡来したといわれています。 ※細く長い茎の先端に可憐な花をつけます。繁殖力が強い。 ※花色は紅、ピンク、白。黄色は別種。 ※アンバランスで、とにかく風によく揺れます。 ※1日中の雨。きょうもありがとうございます。
24日(木)
抱え込む清き癖あり白桔梗
どこにでもある、そんな花が盆花となったのかもしれない。
かかえこむ きよきくせあり しろききょう季語=白桔梗 ※秋の七草のひとつ。白は園芸種といわれています。 ※ただのキキョウといえば青みがかった紫色。いわゆる桔梗色です。 ※古来から日本全国に自生する花ですが、現在では姿を消しつつある植物のひとつのようです。 ※きりきりしやんと。きょうもありがとうございます。
23日(水)
淋しさに滑り込みしは銀やんま
やんまは大きいトンボのことで、その速力は昆虫の中では最速に近いといわれています。
さみしさに すべりこみしは ぎんやんま季語=銀やんま ※トンボは秋の季語とされています。 ※秋らしいのは赤とんぼや穏やかに飛ぶ小型のトンボ。 ※オニヤンマやギンヤンマのような大型のトンボは一直線にびゅんと飛ぶ感じで、夏の日差しが似合います。 ※トンボはやはり水辺に多い。きょうもありがとうございます。
22日(火)
うろうろと秋分の日のうろうろと
秋分の日は、太陽は真東から登り真西に沈みます。
うろうろと しゅうぶんのひの うろうろと季語=秋分の日 ※秋分の日は「祖先を敬い、亡くなった人を偲ぶ日」と定められた国民の休日です。 ※春分の日と同じく、昼と夜の時間がほぼ等しくなります。 ※秋の彼岸の中日であり、この日を境にどんどん夜が長くなります。 ※人はどうだろう? きょうもありがとうございます。
21日(月)
要らぬものきびきびと捨て女郎花
盆花としても好まれますが、切花にするとこぼれるのが早かったりする。
いらぬもの きびきびとすて おみなえし季語=女郎花 ※粟花とも呼ばれ、小さな黄色い花を無数に付けます。 ※繊細な細工の施されたかんざしのような花です。 ※枯れると強烈な匂いを発します。腐った醤油のようだとも。 ※秋の七草のひとつで、古来より日本全国に自生するとか。 ※今どきは自生の方が珍しいのかも。きょうもありがとうございます。
20日(日)
数えれば思い出となる彼岸花
毎年、秋の彼岸には遅れることなく咲くそうです。
かぞえれば おもいでとなる ひがんばな季語=彼岸花 ※秋のお彼岸のころに咲く個性的な赤い花。曼珠沙華。 ※畦道や墓地にはとくによく植えられています。白や黄色い花もあります。 ※彼岸入り。きょうもありがとうございます。
19日(土)
片言の間延びするかの秋の昼
けれども夏日のような真白な積乱雲の浮かぶ一日でした。
かたことの まのびするかの あきのひる季語=秋の昼 ※秋晴れの日の穏かな昼のこと。 ※「昼」とつく季語に、どんより的なイメージはないようです。 ※誤算はあるもの。きょうもありがとうございます。
18日(金)
悔しさをこめかみにあて秋の暮
書店などではもう来年の手帳が並びはじめましたね。
くやしさを こめかみにあて あきのくれ季語=秋の暮 ※秋の夕暮れのこと。アッという間に暗くなる感じがあります。 ※年末を意識するとしみじみとします。きょうもありがとうございます。
17日(木)
なぐさめも置いてきぼりの夜半の秋
家人の寝静まる頃には、耳をすますでもなく、虫の声が静かに響き渡ります。
なぐさめも おいてきぼりの よわのあき季語=夜半の秋 ※しみじみと夜を長く感じる心情を捉えた季語です。 ※「夜半」は、夜更け、夜中のこと。 ※「秋の夜」はもちろん秋の季語、でも「夜の秋」は夏の季語。 ※「夜半」となると秋の季語。でもこの「半」はどうやら当て字らしい。 ※ふつうは「やはん」と読むよね。きょうもありがとうございます。
16日(水)
親ありてふるさとのなき赤のまま
「ままごと」は漢字で書くと飯事。
おやありて ふるさとのなき あかのまま季語=赤のまま ※タデの仲間で、取るに足りない花という意味で犬蓼(いぬたで)とも呼ばれます。 ※実際、至るところで見られる雑草です。タデ科の中では最も身近な花。 ※鄙びた感じが如何にも俳人好みで、その昔、虚子は新しい秋の七草のひとつとして「赤のまま」の名を上げたといいます。 ※紅紫色の小さい花が枝先に小さな花穂をつくります。3センチくらいの花穂。 ※花の粒は子どもたちのまま事遊びでは赤飯という役割。そこから「赤のまま」と呼ばれるようになったと聞いています。 ※今が盛りと咲いていますよ。きょうもありがとうございます。
15日(火)
とうがらし正直さなり疲労なり
早めに摘めば「青唐辛子」、完熟すれば「赤唐辛子」。
とうがらし しょうじきさなり ひろうなり季語=唐辛子 ※中南米原産のナス科の一年草の実。 ※もともとは観賞用、または毒薬として栽培されるようになったといわれています。 ※トウガラシの「唐」は大陸経由で日本に伝わったという意味なのだとか。 ※どっちもからい。きょうもありがとうございます。
14日(月)
聞きとれぬむらさき色の愁思かな
もう少しでも風が冷たくなると 一層もの寂しいが染みてくるのかもしれません。
ききとれぬ むらさきいろの しゅうしかな季語=愁思 ※秋の移ろいからくる寂しさやもの悲しさのこと。 ※秋の夜長もときにもの寂しい。きょうもありがとうございます。
13日(日)
白萩を身に写しより喪に服す
万葉のころから詩歌の題材として 最も愛されてきた秋の花かもしれません。
しらはぎを みにうつしより もにふくす季語=白萩 ※ハギは秋を代表する花木で、秋の七草のひとつ。 ※マメ科の花。きょうもありがとうございます。
12日(土)
ひとくせもふたくせもありちちろ虫
夏の日のようでいて、どこか秋の装い。
ひとくせも ふたくせもあり ちちろむし季語=ちちろ虫 ※コウロギのこと。種類によって鳴き方が違う。 ※リリリリと鳴くのは、ツヅレサセコウロギといいます。 ※きょうもありがとうございます。
11日(金)
歯には絹目には水引うらおもて
ミズヒキの花は不思議な花です。
はにはきぬ めにはみずひき うらおもて季語=水引 ※タデ食う虫も好き好きのタデ科。 ※ミズヒキの花は上から見れば赤色。ひっくり返せば白色に見えます。 ※なんのために? きょうもありがとうございます。
10日(木)
台風や虫の知らせのそとがわに
受け入れがたきことは、あきらめにくいのかも。
たいふうや むしのしらせの そとがわに季語=台風 ※突然はなしだ。きょうもありがとうございます。
9日(水)
紅鮭の紅ほぐしおりほぐしおり
簡単に身を裂くことができるのでサケというとか。そんな説もあるとか。
べにざけの べにほぐしおり ほぐしおり季語=紅鮭 ※サケは産卵のために生まれた川に帰って来ます。産卵時期は8~12月と意外に長い。 ※日本でもっとも好まれるサケがベニザケといいます。 ※残念ながら国内産は希少で、そのほとんどはアラスカやカナダからの輸入もの。 ※ベニザケだけはすべて天然だという。きょうもありがとうございます。
8日(火)
遮断機のかくりとあがり曼珠沙華
明日あたり花開くのじゃないかしら。
しゃだんきの かくりとあがり まんじゅしゃげ季語=曼珠沙華 ※繊細でいて大づくりでユニークな花。 ※30~50センチほどの葉もない茎の頂に鮮やかな赤い花を咲かせます。 ※今は昔と違って曼珠沙華にいだくイメージがだいぶ変ってきたようです。 ※忌み嫌う花でなく鑑賞するための花。街に咲くわりと身近な花。 ※どしゃ降り。きょうもありがとうございます。
7日(月)
自転車は錆びつくままに竹の春
竹は秋に茂り、春に黄葉します。
じてんしゃは さびつくままに たけのはる季語=竹の春 ※竹は春に生まれ夏の間に一気に成長します。 ※そして万物に秋を感じるころに青々と茂るため、竹の春といいます。 ※放置すれば古びる。きょうもありがとうございます。
6日(日)
電球の切れておわりの秋黴雨
梅雨どきのように じとじとむしむししています。
でんきゅうの きれておわりの あきついり季語=秋黴雨 ※「黴雨」は梅雨と同じです。秋の長雨のこと。 ※黴(かび)という字に春雨のような明るいイメージはありません。 ※雨があっての、秋の豊かな実りなのでしょうけれども‥‥。 ※切れかかった電球はチカチカ。きょうもありがとうございます。
5日(土)
伝言をそのまま伝え秋の雲
変化に富んでいて表情が豊かに。
でんごんを そのままつたえ あきのくも季語=秋の雲 ※からりと晴れた空に高々と浮かぶ白い雲などはとくに秋らしい。 ※呑気なばかりではないけれど。きょうもありがとうございます。
4日(金)
しゃくしゃくと子供時代と梨食いて
「なし」ではなく「有りの実」と呼ぶこともあるそうです。げん担ぎ的な理由ですかね。
しゃくしゃくと こどもじだいと なしくいて季語=梨 ※和日本の栽培のはじまりは弥生時代からとも。意外に古い。 ※旬ですね。きょうもありがとうございます。
3日(木)
明るめの服着て秋の雨に濡れ
少しくらいの距離なら傘はいらないけれど。
あかるめの ふくきてあきの あめにぬれ季語=秋の雨 ※夏から秋、または秋から冬に移行する時期は、梅雨のように降り続くことが多い。 ※もう少し涼しくなると、もの寂しい感じの雨となるのかもしれません。 ※よく降りますね。きょうもありがとうございます。
2日(火)
足と手の同時に動く秋の蝶
そこそこ混み合う夕方の改札。 アゲハチョウにとって、昇って来た階段を下に戻ることはむずかしいらしい。
あしとてと どうじにうごく あきのちょう季語=秋の蝶 ※花が多くなれば蝶も多くなる? きょうもありがとうございます。
1日(火)
鶏頭や背骨の軋む音のする
擬態?と思うほど 雄鶏のトサカによく似た花です。
けいとうや せぼねのきしむ おとのする季語=鶏頭 ※高さ1メートルほどのインド原産の植物。 ※ケイトウといえば赤。黄色や白などもあります。 ※最近は槍のように尖った品種が人気なのかもしれません。 ※花期が長く8~11月ごろまで咲き続けます。 ※真っ赤でびっくりかも。きょうもありがとうございます。