今日の俳句、こうのこうき
2015年10月
31日(土)
しりとりの続きとなしり草の絮
雲が多いと風が冷たい。
しりとりの つづきとなりし くさのわた季語=草の絮 ※ネコジャラシやススキ、アシなどの穂花がほつれて綿毛のようになった状態のこと。 ※繁殖力の強い雑草は、その種子を風に乗せて遠くまで飛んでいきます。 ※紅葉の季節だ。きょうもありがとうございます。
30日(金)
突き放すことなくかかえ郁子の艶
アケビによく似ていますが、表面は少々いびつ。
つきはなす ことなくかかえ むべのつや季語=郁子 ※蔓性のアケビ科。常盤通草(ときわあけび)ともいいます。 ※アケビとの大きな違いは熟れても実が割れないこと。そして常緑。 ※その昔は食用として近江から宮中に献上されていたそうです。 ※でこぼこ。きょうもありがとうございます。
29日(木)
あてどなく手すり足すり秋の蠅
木枯しが吹いて一気に寒くなるかと思ったら、意外に暖かい日が続いています。
あてどなく てすりあしすり あきのはえ季語=秋の蠅 ※秋が深まるにつれ、さすがのハエも元気がなくなり、日向などの暖かい場所を好むようになります。 ※やれ打つな‥‥。きょうもありがとうございます。
28日(水)
バス停のベンチは古びピラカンサ
あちらこちら赤い実が目を引きます。
ばすていの べんちはふるび ぴらかんさ季語=ピラカンサ ※ピラカンサはタチバナモドキなどの赤い実のなる木の総称。 ※赤や橙の実を房なりにつけます。 ※野鳥の好物。きょうもありがとうございます。
27日(火)
靴べらのへらの丸みや天高し
いっそう空が高く感じます。
くつべらの へらのまるみや てんたかし季語=天高し ※季語の由来は「秋高くして塞馬(さいば)肥ゆ」という中国の詩だといわれています。 ※日本では行楽などのウキウキとした意味合いで使われます(澄み渡る空はどこか寂しくもありますが)。 ※塞馬(さいば)とは砦の馬のこと。もとの詩は秋は馬を駆る遊牧民族の侵入に警戒しろという意なのだとか。 ※空一面に鰯雲が広がってた。きょうもありがとうございます。
26日(月)
かまきりの日向にありて翳りおり
見た目15センチはありそうな大カマキリが、玄関脇に張り付いたまま動いてくれない‥‥。
かまきりの ひなたにありて かげりおり季語=蟷螂 ※蟷螂は「かまきり」もしくは「とうろう」と読ませます。 ※俳句にて漢字で表記する場合は、ほぼ「とうろう」と読んで間違いないかと思います。 ※日本のカマキリには大きく分けて、全身が緑色の種と茶色の種、そして緑と茶の混ざった三種があるようです。 ※枯蟷螂(かれとうろう)という冬の季語があります。昔の人は冬に近づくにつれカマキリの体の色も草木のように変化したと考えていました。 ※痩せすぎで顔の尖った印象の人をカマキリに喩えることがありますが、間違いなくほめ言葉ではありませんよね。 ※背中が茶色い。きょうもありがとうございます。
25日(日)
負けん気の数に見合いし草の花
さすがに花の数も減ってきた。
まけんきの かずにみあいし くさのはな季語=草の花 ※秋は野の花の季節です。いろいろあり過ぎて、千草(ちぐさ)の花ともいわれます。 ※初秋は数多のものが咲き混じる生き生きとした美しさがあります。晩秋に近づけばその数も少なくなり、ひっそりとした美しさに目が行きます。 ※本来、雑草は育てるのが難しいものらしい。 ※がんばれ雑草。きょうもありがとうございます。
24日(土)
十円は小銭の匂い後の月
神頼みはたいてい十円玉と五円玉。
じゅうえんは こぜにのにおい のちのつき季語=後の月 ※名月のひと月後にめでるもう一つの名月。 ※旧暦九月十三日の月。十五夜に対し十三夜とも呼びます。 ※十三日目の月なので少し欠けています。そこが如何にも「日本人らしい」という今年最後の名残りの名月です。 ※十分に明るい月。きょうもありがとうございます。
23日(金)
ひとくぎりつけて劣らず秋の薔薇
ひとつの生け垣に真紅のバラが二輪咲いていた。
ひとくぎり つけておとらず あきのばら季語=秋の薔薇 ※バラの花は夏が盛り。単にバラといえば夏の季語です。 ※バラは基本的に四季咲きのため、秋や冬にも花を付けるものがあります。 ※やや小ぶりな印象も受けますが、香りは秋咲きの方がいいとも言われています。 ※生きてます!って感じ。きょうもありがとうございます。
22日(木)
月仰ぎ上下左右をあらためる
夕暮れがはやいからか、月に目が行くことが多い。
つきあおぎ じょうげさゆうを あらためる季語=月 ※もっとも美しいとされる秋の月は、「月」だけで秋の季語です。 ※日曜日は十三夜。きょうもありがとうございます。
21日(水)
秋の蚊や打ち損じるも気が晴れる
吸血で赤く膨らんだ腹が見え、打つことをためらった。
あきのかや うちそんじるも きがはれる季語=秋の蚊 ※寒さを感じるようになってからの蚊。どこか弱々しく動きが鈍い。 ※残る蚊、蚊の名残などともいいます。 ※ブーンという音がしなかった。きょうもありがとうございます。
20日(火)
強情も檸檬の皮もほろ苦し
レモンの香りは皮にありますが、 食せば苦い。
ごうじょうも れもんのかわも ほろにがし季語=檸檬 ※原産はインド北部なのだとか(欧米かと思っていました)。ミカン科。 ※日本に渡来したのは明治時代になってから。 ※国内にも有名な産地はありますが、ほとんどはアメリカからの輸入品。 ※疲労回復に。きょうもありがとうございます。
19日(月)
菊の香や世話するひとのいて地蔵
風ひとつない菊日和でした。
きくのかや せわするひとの いてじぞう季語=菊の香 ※日本を代表する花のひとつ。 ※古くに中国から薬用として渡来した花です。 ※和菊と呼ばれるものは日本で改良されたものです。 ※こんな日を「菊うらら」ともいいます。きょうもありがとうございます。
18日(日)
団栗は背を比べ栗は揺りかご
天然ものは実が小さい(そうです)。
どんぐりは せをくらべ くりはゆりかご季語=栗 ※ブナ科の落葉高木で、縄文時代から栽培されていたようです。 ※クリはとげとげの毬(いが)の中で育つ実であり、種です。食べる部分がじつは種。 ※栗の美味しい時季になりましたね。きょうもありがとうございます。
17日(土)
童心に返りたくなり秋刀魚焼く
サンマだけはすぐに見分けられるでしょ?
どうしんに かえりたくなり さんまやく季語=秋刀魚 ※旬は夏から秋ですが、今ごろがもっとも脂がのっています。 ※サンマだけは未だにすべてが国産の天然もの。希少ではないけれど、日本にとって貴重な魚なんですね。 ※ひと手間でぜんぜん変りました。→「ガッテン流サンマの塩焼き」で検索してみて。 ※うれしくなるよ。きょうもありがとうございます。
16日(金)
安楽にみせて紫式部の実
紫色の小さな実、一つひとつが上品な感じ。
あんらくに みせてむらさき しきぶのみ季語=紫式部の実 ※名前は『源氏物語』の作者・紫式部にあやかったもの。 ※対生する葉のわきに小さな丸い実を無数に付けます。 ※「実むらさき」とも呼びます。五文字で使いやすいのですが、本意は葉が落ちてからの実の美しさ、なのだとか。 ※雨の日は寂しげ。きょうもありがとうございます。
15日(木)
目にうろこ空にも鱗鳥渡る
気持ちのいい秋晴れが続きますね。
めにうろこ そらにもうろこ とりわたる季語=鳥渡る ※渡り鳥のこと。秋も深くなるといろいろな鳥が北方から渡ってきます。 ※大きくはシベリヤなどからの渡りですが、国内から国内も含めた秋に移動する冬鳥です。 ※大きな木の上から小鳥の声が盛んに聞こえます。 ※あちらこちらで。きょうもありがとうございます。
14日(水)
自転車のかごにすとんと秋の空
「秋の空」は、定かでないことのたとえ。
じてんしゃの かごにすとんと あきのそら季語=秋の空 ※雲ひとつない秋晴れのこと。ですが、秋の空模様はじつに変りやすい。 ※「女心と秋の空」。じつは「男心と秋の空」が先にあって男の言い分としての「女心」なのだとか(「新編故事ことわざ辞典」鈴木棠三)。 ※さもありなん。きょうもありがとうございます。
13日(火)
巻数を右から揃え夜の長さ
夜型には夜型なりの健康管理が必要ですね。
かんすうを みぎからそろえ よのながさ季語=夜長 ※秋は実際以上に夜が長く感じます。 ※無理は続かないさ。きょうもありがとうございます。
12日(月)
奔放に生きたくながむ花芒
花とは見えない花です。
ほんぽうに いきたくながむ はなすすき季語=花芒 ※秋風になびく動物の尾っぽのような花穂。尾花ともいいます。 ※花穂はじきに綿毛のように白くなり、飛び散って行きます。 ※秋の七草のひとつです。きょうもありがとうございます。
11日(日)
雁首をそろえ甘柿つやつやと
食べ物の好き嫌いは極力少ないほうが幸せだと思う。
がんくびを そろえあまがき つやつやと季語=甘柿 ※秋の風情。きょうもありがとうございます。
10日(土)
負けん気のおしろい花の赤と白
意外にも花言葉は「臆病」であり「内気」なのだとか。
まけんきの おしろいばなの あかとしろ季語=白粉花 ※白粉花(おしろいばな)は、夕方に咲いて翌日の昼ごろにはしぼんで落ちてしまいます。別名を夕化粧。 ※おしろいの名は種の中に白い粉(デンプン)が詰まっているから。 ※赤や白、黄色い花をたくさん咲かせます。豊かに茂る葉とのコントラスがいい。 ※南米原産の花で、観賞用とし江戸時代に渡来したそうです。 ※野生化し、街路樹や公園のわきなどでよく見る花だと思います。 ※昔は体育の日。きょうもありがとうございます。
9日(金)
秋晴るる週に一度の不燃ごみ
「過剰包装」とはよく言ったものだ。
あきはるる しゅうにいちどの ふねんごみ季語=秋晴るる ※「季節」+「晴れ」として季語化したのは秋晴れと冬晴れだけです。 ※空の高さ、澄んだ空気、さわやかな気候が、いつもの晴れ間を特別なものに感じさせるのでしょうか。 ※秋は実りの季節であると同時に、万物が冬に向かう中間点です。 ※「オリンピック晴れ」ともいうそうだ。きょうもありがとうございます。
8日(木)
倦怠の尺度をはかり唐辛子
トウガラシの中で最も辛いといわれるハバネロ。なのに実が丸いカタチをしていて、なんだか辛そうに見えない。
けんたいの しゃくどをはかり とうがらし季語=唐辛子 ※仮に黄色いトウガラシを眺めて作った句であったとしても、俳句でトウガラシといえば、とんがっていて赤くて辛いもの。 ※トウガラシは空に向かって実を付けます。炎のようにも見えます。 ※香辛料に欠かせない。きょうもありがとうございます。
7日(水)
秋冷やいつもと違う長電話
大した要件でもないのに話しが寒いということも。
しゅうれいや いつもとちがう ながでんわ季語=秋冷 ※朝夕はもう寒いくらいですから。 ※じっとしていると足もとがひえびえとします。 ※頭の中でコタツがちらちら。きょうもありがとうございます。
6日(火)
マネキンは外人ばかり林檎食む
そんな不自然など、今さらなのですが。
まねきんは がいじんばかり りんごはむ季語=林檎 ※リンゴが一番美味しいのは秋です。 ※果皮のベタつきは熟している証しなのだとか(ずっと農薬なのかと思っていました、すいません)。 ※リンゴは疲労回復にもいいらしいよ。きょうもありがとうございます。
5日(月)
にんげんの数におびえし鰯雲
雲の上から地上を見下ろしたとしたら?
にんげんの かずにおびえし いわしぐも季語=鰯雲 ※秋によくみる雲の形状で、さざ波のように広がる雲です。 ※鱗雲(うろこぐも)とも鯖雲(さばぐも)ともいいます。 ※連なる雲の大小の違いだけで羊雲も同じもの。 ※大都市を行き交う人の波。きょうもありがとうございます。
4日(日)
要るものと要らないものにわけ十月
分別はできても 簡単にポイとできないのが 人情なのかも。
いるものと いらないものに わけじゅうがつ季語=十月 ※別名を神無月。正確には旧暦十月のことなので、神無月と呼ぶにふさわしいのは11月なのでしょうが。 ※スポーツ、行楽、読書など後半は過ごやすい日になることが多いようです。前半は台風やら何やら雨の日が多いかも。 ※人情でなければ個の性格か。きょうもありがとうございます。
3日(土)
求むるは自由と気まま思草
茎は枯れ色、花は瑞々しい赤紫。 横向きに咲く、そこそこ珍しい花かも。
もとむるは じゆうときまま おもいぐさ季語=思草 ※うつむいているようにも見えるので思草、西洋人の持ち込んだキセルにも似ているから南蛮煙管。 ※季語としてはオモイグサが主ですが、植物としての正式名称はナンバンギセルです。 ※ススキなどの根に宿るいわゆる寄生植物で、葉緑素を持たず光合成ができません。 ※どこかアンバランス。きょうもありがとうございます。
2日(金)
一束の赤むらさきの芋の茎
見たまんま(笑)。もの珍しさから自然食品の店で買ってみた。
ひとたばの あかむらさきの いものくき季語=芋の茎 ※季語としては、芋茎(ずいき)という呼び名で知られています。 ※食材としては「いもがら」という呼び名が一般的なようです。 ※自然食品の店ではレシピと一緒に「芋がら」の名で販売されていました。 ※里芋の茎のことで、あく抜きをしてから酢の物や和え物、煮つけや味噌汁の具などにして食します。 ※クセがなくて美味しいので、アイデア次第でいろいろ活用できるのかも。 ※群馬県高崎市産とあり。きょうもありがとうございます。
1日(木)
戸惑いのひとつも見せて芋嵐
深夜2時、あしたの風がきょうの窓を叩いています。
とまどいの ひとつもみせて いもあらし季語=芋嵐 ※芋(サトイモ)の葉を倒さんばかりの強風。秋の嵐のこと。 ※サトイモはおそらく日本で農業のはじまった頃からの歴史ある野菜です。 ※サトイモの葉も蓮の葉と同じ性質で、水を通さない葉っぱ。露となった雨水が葉っぱの上をコロコロと転がります。 ※今年もあと3ヶ月だよ。きょうもありがとうございます。