今日の俳句、こうのこうき
2016年9月
30日(金)
手間暇をかけて近づく秋日和
やっと、という感じの、秋晴れ。
てまひまを かけてちかづく あきびより季語=秋日和 ※秋らしい穏やかな日のこと。風もなく過ごしやすい。 ※晴れ渡っていることが絶対条件ではないようだ。 ※明日からまた雨模様。きょうもありがとうございます。
29日(木)
秋の声ほどけぬように玉結び
吐き出さないと 不満は延々と溜まるもの。
あきのこえ ほどけぬように たまむすび季語=秋の声 ※秋らしい音のこと。何か特定のものではありません。 ※しみじみとする感じや爽やかな空気感など、秋の気配もまた秋の声。 ※上手にね。きょうもありがとうございます。
28日(水)
透明な匂いをめぐる金木犀
雨の日はよく香る、そんな気がします。
とうめいな においをめぐる きんもくせい季語=金木犀 ※街に香りがあふれて喜ばれる代表的な花木。 ※中程度の高木で常緑樹なので街のいたるところで見かけます。 ※春なら沈丁花。きょうもありがとうございます
27日(火)
はじめから終わりのみえる秋の暮
キンモクセイが、咲きはじめた。
はじめから おわりのみえる あきのくれ季語=秋の暮 ※釣瓶落しとも言われ、秋の日暮れはどこか淋しくもある。 ※橙色の夕日。きょうもありがとうございます。
26日(月)
「めいわく」は私の尺度秋の蜂
たぶん、ミツバチだと思う。 目の前に現われた一匹をとっさに手で追い払ったら、 やにわに耳の裏に張り付かれて‥‥おどろいた、おどろいた。
めいわくは わたしのしゃくど あきのはち季語=秋の蜂 ※秋のハチは、冬眠前だけに忙しいのだろう。 ※霜が降りる頃には死んでしまうものも多いそうだ。 ※刺されなくてよかった。きょうもありがとうございます。
25日(日)
ほとぼりのいずれは冷めし秋海棠
垣根のように秋海棠が群生していた。 単体とは印象がずいぶん違う。
ほとぼりの いずれはさめし しゅうかいどう季語=秋海棠 ※中国原産の花で、憂いを秘めた美女にたとえられます。 ※赤く長い花柄に薄紅色の花を下げ、日陰を好みます。 ※たしかに美しいかも。きょうもありがとうございます。
24日(土)
透明な青みの残る秋刀魚焼く
さんまのうろこは青い。 じっさい、はがれたうろこは驚くほど青い。
とうめいな あおみののこる さんまやく季語=秋刀魚 ※旬ですね。きょうもありがとうございます。
23日(金)
人ごみに流れのありし秋彼岸
ほぼ雨の一週間。雨も台風もこの先はご遠慮いただきたいね。
ひとごみに ながれのありし あきひがん季語=秋彼岸 ※秋の彼岸は、秋分の日を境に前後3日、合計1週間あります。 ※彼岸はあの世のこと。この世は此岸(しがん)と呼びます。 ※おはぎ食べよう。きょうもありがとうございます。
22日(木)
しゅうしゅうのつかぬことより逃げて虫
昔読んだカフカの「変身」という小説、 ほんとうに衝撃的だったな。
しゅうしゅうの つかぬことより にげてむし季語=虫 ※虫の一字で、秋に鳴く虫(コウロギ科とキリギリス科)の総称とする。 ※収拾、収集(蒐集)、拾集、修習。その他、舟楫(船で物を運ぶ)、秋収(秋の農事のとりいれ)、習習(なごやかな風が吹く)、啾啾(虫などが小さな声で鳴く)以上、広辞苑より。 ※今もときどき思い出す。きょうもありがとうございます。
21日(水)
静けさのたちまちとどく鉦叩
まるで室内で鳴いているかのようで、 姿は見えず‥‥
しずけさの たちまちとどく かねたたき季語=鉦叩 ※澄んだ音でチッチッチッと連続して鳴きます。 ※昼夜問わず鳴いていますが、その声はかすかなもの。 ※あら、フシギ。きょうもありがとうございます。
20日(火)
胃袋を空っぽにして鶏頭花
力強さが魅力の花ですが、 長雨には弱いらしい。
いぶくろを からっぽにして けいとうか季語=鶏頭 ※高さは1メートル以上。頂にトサカのような赤い花を付ける。 ※一般的には赤ですが、黄や白もあります。 ※身近だけど異質。きょうもありがとうございます。
19日(月)
そぞろ寒保温の飯のかたくなる
限度はあるから。
そぞろさむ ほおんのめしの かたくなる季語=そぞろ寒 ※秋も深まって、なんとなく、それとなく感じる寒さ。 ※またすぐ休日。きょうもありがとうございます。
18日(日)
靴底のもろくなりゆく九月かな
暑さ寒さも、明日より秋のお彼岸だよ。
くつぞこの もろくなりゆく くがつかな季語=九月 ※まるで梅雨どきみたいだ。きょうもありがとうございます。
17日(土)
底なしの無月に至る反作用
温暖化はもはや 常態化したみたいだ。
そこなしの むげつにいたる はんさよう季語=無月 ※十五夜が雲に隠れて見えないこと。 ※満月、見えた? きょうもありがとうございます。
16日(金)
十六夜のふちの欠けたる夫婦かな
旧暦(八月十六日)と新暦(9月16日)の日付がぴったり合うのは、じつに46年ぶりのことなのだとか。
いざよいの ふちのかけたる めおとかな季語=十六夜 ※仲秋の名月の翌日の月。わずかに欠けた十六日目の月のこと。 ※でも今年は明日が満月。 ※月の満ち欠けを基準にした旧暦(太陰太陽暦)も、ずれることはある。 ※完璧はないね。きょうもありがとうございます。
15日(木)
冷やかに己が憤怒を拾いけり
地中深くにでも、埋めちゃって。
ひややかに おのがふんぬを ひろいけり季語=冷やか ※朝夕が冷えること。場所によっては冷え冷えといった感じだろう。 ※雨の日はなおさら。きょうもありがとうございます。
14日(水)
未練すら無花果ゆたかなりにけり
イチジクはアダムとイブの神話にも登場します。 身に付けている葉っぱがそれ。
みれんすら いちじくゆたか なりにけり季語=無花果 ※花が咲かないように見えるので、無花果と書きます。 ※実際は実の中に小花をつけ、秋になって甘く瑞々しく肥大化します。 ※実の中のつぶつぶが花。きょうもありがとうございます。
13日(火)
悲しみは繕い易くきりぎりす
呑気そうにみえても、内心はそうでもないのかも。
かなしみは つくろいやすく きりぎりす季語=螽斯 ※チョンギースとか、ギーチョンとか、多くは昼に鳴きます。 ※美しい声ではないかな。きょうもありがとうございます。
12日(月)
純然と張り付いている夜長かな
ときどき、自分で自分を、笑う。
じゅんぜんと はりついている よながかな季語=夜長 ※9月ともなると夜になるのが早いと感じる。半月前を思えば驚くほど。 ※ますます長くなる。きょうもありがとうございます。
11日(日)
はなむけに萩の風吹く行儀よく
内心はどんなものなのか。
はなむけに はぎのかぜふく ぎょうぎよく季語=萩 ※万葉の頃より秋を感じさせる花のひとつ。 ※仲秋よりこぼれはじめる。きょうもありがとうございます。
10日(土)
生き生きと命をけずるいわし雲
寿命なんて誰にもわからない!
いきいきと いのちをけずる いわしぐも季語=鰯雲 ※さざ波のような雲のこと。鱗雲とも鯖雲とも言う。 ※寄せては返す。きょうもありがとうございます。
9日(金)
野放図に藪にらみして曼珠沙華
炎のたとえは、あまりに、ありがち。
のほうずに やぶにらみして まんじゅしゃげ季語=曼珠沙華 ※球根植物。秋の彼岸前になると咲きはじめます。 ※面白いことに、彼岸を過ぎると途端に見なくなります。 ※別名が多い。彼岸花、幽霊花、死人花、捨子花、天蓋花、狐花など。 ※急に咲いた。きょうもありがとうございます。
8日(木)
コスモスの猫背ともなり振り返る
早いものは、夏のはじめには咲いている。 気づかないだけ。
こすもすの ねこぜともなり ふりかえる季語=コスモス ※江戸末期から明治時代に日本に渡来。原産はメキシコ。 ※見ためは優しげな花ですが、野生化してたりもする。 ※風にふわふわ。きょうもありがとうございます。
7日(水)
根深さに濁る弦月繕えず
今宵と書いて「こよい」。 では、昨宵と書いて、何と読む?
ねぶかさに にごるげんげつ つくろえず季語=弦月 ※秋だけは「月」の一語で季語となる。 ※弦月は、弓を張ったように見える月のこと。 ※上弦の月、もしくは下弦の月。弓張月(ゆみはりづき)とも。 ※答えは、「さくしょう」。わたくしは初耳でしたわ。 ※週後半は雨模様。きょうもありがとうございます。
6日(火)
蟋蟀の転がる夢や腹八分
正直なところは、よくわからない。
こおろぎの ころがるゆめや はらはちぶ季語=蟋蟀 ※種類が多く、種類によって何声が違う。 ※どれがどれやら。きょうもありがとうございます。
5日(月)
虫時雨のちのいのちの重きこと
一日のなかに、夏と秋が混在している感じ。
むししぐれ のちのいのちの おもきこと季語=虫時雨 ※虫が競うように鳴いている重奏感を時雨にたとえた季語。 ※どこか寂しい原風景。きょうもありがとうございます。
4日(日)
菊香る眠れぬ夜の背すじより
切り花は一年中ある。 用途は、まあ、おおむね決まっている。
きくかおる ねむれぬよるの せすじより季語=菊 ※俳句でたんにキクという場合は園芸ものを指すようです。 ※野に咲くキクは、まとめて野菊という季語があります。 ※キクは秋の花。きょうもありがとうございます。
3日(土)
新涼や衿袖口を淡くして
白い服はあまり着ない。気を使うから。
しんりょうや えりそでぐちを あわくして季語=新涼 ※秋になって感じる涼しさ。 ※日中は夏日であっても朝晩は過ごしやすくなる。 ※明らかに。きょうもありがとうございます。
2日(金)
鼻先のつとめて狭き新松子
青くてかたい。いやに近視眼的。だめだそりゃ。
はなさきの つとめてせまき しんちじり季語=新松子 ※新しくできた松ぼっくりのこと。目に付くようで目に付かない。 ※松ぼっくりは一年以上かけて成熟するそうです。 ※見慣れた茶色い松ぼっくりは木質化した最終形。 ※読めない季語のひとつ。きょうもありがとうございます。
1日(木)
ままごとのまだ先のある赤のまま
月が替わると、とたんに秋の気分。
ままごとの まださきのある あかのまま季語=赤のまま ※タデ科の犬蓼のこと。至るところに生えています。 ※昔の子どものままごとでは、粒々の赤い花や実を赤飯に見立てた。 ※防災の日。きょうもありがとうございます。