雲母 うんも
改題創刊号/大正6年12月(=1917年12月)号一冊(一部): 拾銭
「雑詠」巻頭句 飯田蛇笏 選
俳号: 晨生 所在地: ――
選者の飯田蛇笏(いいだ・だこつ)は、天地風物を重んじる格調高い作風で知られています。その蛇笏が主宰する「雲母」は拠点を東京ではなく山梨に置き、地方俳誌として当時の俳壇に大きな影響を与えた稀有な存在でした。孤高の俳人の作り出す俳句は気迫にみち、蛇笏調と呼ばれ今なお多くの人々を魅了します。ゆえに虚子に次ぐ俳壇の巨人とも。山国に生まれ自然に親しんだ蛇笏の魅力は、(現代人にはない)溢れるほどの自然感情なのだといいます。蛇笏の句としては、おそらく芋の露連山影を正しうす がもっとも有名です。(ちょっと玄人好みかも)をりとりてはらりとおもきすすきかなその美しさや景色、空気感をただ一本のススキの重さから想像させるのだから、すごい一句です。今どきは月見のためのススキも花屋で買いますが、これは昭和6年作の名句です。「雲母」の前身は愛知県で創刊された「キララ」という俳誌でした。蛇笏が主宰となったときに発行所を山梨に移し、「雲母」と改題しました。その改題創刊号の巻頭句を飾ったのが、晨生です(この俳号、何と読むのでしょうか、ジンセイ?)。※月代(つきしろ)=【秋の季語】満月や満月に近い月が出るころに、空が白みを帯びたように明るく見えること。※榎(えのき)=昔は街道の一里塚に植えられたそうです。※荘(そう、しょう)=鎌倉時代などに荘園だった場所のことでしょうか。※筧(かけひ)=竹や木材で地上に水を引くための樋もしくは装置※蒼天(そうてん)、蒼穹(そうきゅう)=青空のこと※筆を擱く(ふでをおく)=文章を書き終えること。擱筆(かくひつ)。※聳ゆる(そびえる)※露空=梅雨空のことでしょうか。(原句の通り)※紫苑(しおん)=【秋の季語】おもに庭園に植えられる野菊に似た花。淡い紫色で、丈が高い。※細雨(さいう)=きりさめのこと。
引用: 「雲母」改題創刊号/雲母発行所(大正6年12月)
蛇笏の句の特長は、漢語を好んで使うこと、そして幻想主義的なところがあることではないでしょうか。どこか曖昧さを含みつつも、そ知らぬふりでズバリと言い切って見せる。そこが高潔さを感じさせるポイントなのかもしれませんね。
※上記巻頭句に関しては、該当資料からの引用として収集・掲載させていただいています。※旧漢字については、インターネットの特性上、また初心にも読みやすいよう考慮し、常用漢字に変更している場合があります。 ※「ゝ」や「ゞ」などの踊り字については、横書き表示ということもあり、読みやすさを優先するため、適切な平仮名に変更させていただいています。